NIHSS(NIH Stroke Scale)とは?注意点と評価方法
NIHSSとは
NIHSSは「National Institutes of Health Stroke Scale」の略称で、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など脳卒中の神経学的重症度を評価することが可能であり、国際的に広く利用されている評価法の 1 つになります。今回は、以前投稿した【脳卒中と予後予測】の記事でご紹介させていただいたNIHSSの評価内容をご紹介させていただきます。少し専門的ではありますが、急性期病院ではこの結果をもとに予後予測の指標の一つとして活用しているところがありますのでご参考になれば幸いです。
目次
評価内容
①意識(覚醒度)
②意識(応答)
③意識(従命)
④眼球運動障害
⑤視野異常
⑥顔面麻痺
⑦上肢運動
⑧下肢運動
⑨四肢失調
⑩感覚
⑪無視
⑫構音
⑬言語
評価内容
評価内容として意識、運動、感覚、協調性、高次脳機能など合計11項目に対して、3~5段階の点数で評価します。
①意識(覚醒度)
意識(覚醒度)の検査では声掛けや痛みの刺激を入れた場合の反応を評価します。まずは声掛けから行い、反応がない場合は痛み刺激(胸骨圧迫や爪圧迫など)を入れ強度を上げていきます。
0:清明
1:傾眠(呼びかけで覚醒)
2:混迷(強い刺激で覚醒)
3:半~深昏睡(刺激しても覚醒しない)
②意識(応答)
意識(応答)では月と年齢の質問を行っていきます。
0:両方とも正解
1:一方ののみ正解
2:両方とも誤りまたは応答しない
③意識(従命)
意識(従命)では眼の開眼と手の開閉を行うよう指示していきます。
0:両方とも正しく行う
1:一方のみ正しく行う
2:両方とも正しく行わない
④眼球運動障害
眼球運動障害の項目では水平の眼球運動を評価します。意識レベルが低い場合は人の目現象を活用して評価していきます。
0:正常
1:眼球偏位なし、部分的に眼球運動可能
2:眼球偏位あり、眼球運動困難
⑤視野異常
視野異常では上下左右の空間を四分割し検者の指を動かしたり指の本数を数えてもらい評価します。また、片目ずつ行うため被験者は片方の目を隠して実施します。
0:明らかな左右非対称なし
1:部分的半盲
2:完全半盲またはそれ以上の狭窄
3:両側半盲(全盲)
⑥顔面麻痺
顔面麻痺の検査では歯を見せるか笑う、両眼を閉眼するなどの指示により評価します。
0:正常
1:軽度麻痺(左右差は少ないが正常とは言い切れない状態)
2:不全麻痺(部分的な麻痺)
3:完全麻痺(全く動かない)
⑦上肢運動
上肢運動では腕をのばしたまま前方に挙上してもらい評価します。座っている場合は肩の高さまで、寝ている場合は約45°挙上し10秒間保持してもらいます。
0:10秒間保持可能
1:保持可能であるが10秒は困難、完全に落下しない(動揺も含む)
2:保持困難であるが重力にいくらか抗する
3:重力に抗しないが動きがある
4:完全麻痺(動きなし)
⑧下肢運動
下肢運動では背臥位で膝を伸ばしたまま約30°挙上し5秒間保持してもらいます。
0:5秒間保持可能
1:保持可能であるが5秒間は困難、完全に落下しない(動揺含む)
2:時間以内にベッドまで落下する
3:重力に抗しないが動きはある
4:完全麻痺(動きなし)
⑨四肢失調
四肢失調では指鼻試験および踵脛試験にて評価します。指鼻試験は被験者の鼻の頭と検査者の指を被験者の指で交互に触れてもらう検査です。踵脛試験は被験者の下肢を挙上し、踵をもう一方の膝に当ててその踵を脛の上で足関節まで滑らせ元の位置に戻してもらう検査です。
0:失調なし
1:4肢のうち1肢に失調あり
2:2肢以上の失調
⑩感覚
感覚検査では針などを用いて痛みに対する渋面(不快な表情)などの評価を行います。刺激を与える部位は両手足、体幹、顔面とします。
0:正常
1:痛覚鈍麻、痛覚脱失だが触覚あり
2:痛覚と触覚の脱失
⑪無視
無視では視覚、聴覚、触覚などで評価を行います。
0:なし
1:視覚、触覚、または聴覚などの片側不注意
2:視覚、触覚、聴覚の二つ以上の重度片側不注意
⑫構音
構音では構音障害の程度を評価します。単語カードを見せ書かれている単語を読んでもらいます。
0:正常
1:聞き手の努力で理解可能
2:理解不可能
⑬言語
言語では失語症の程度の評価になります。絵カード、呼称カード、文章カードを使用します。絵カードでは絵の中で起こっていることを尋ねます。呼称カードでは中の絵の名前を尋ねます。文章カードでは文章を読んでもらいます。
0:正常
1:呼称、音読の誤り、錯誤、軽度~中等度失語
2:明らかなブローカ失語、ウェルニッケ失語、重度失語
3:無言、全失語
評価シートはこちらからダウンロードできます。
【NIHSS評価シート】
【参考文献】
①編 細田多穂・柳澤健(2010)『理学療法ハンドブック-第1巻 理学療法の基礎と評価』協同医書出版社.