【脳梗塞後の反張膝】効果的なリハビリ法と生活改善のポイント
- 脳梗塞後に反張膝(膝が反る)が起こる代表的な原因
- 反張膝の改善に役立つリハビリ方法(自宅での意識ポイントも含む)
- 装具の考え方、再発を防ぐコツ、生活環境と家族サポートのポイント
脳梗塞の後遺症として、歩いているときに「膝が反ってしまう」「膝がカクッと伸びて怖い」「歩くと膝が痛い・疲れる」といった困りごとが出ることがあります。
この状態は反張膝(はんちょうひざ)と呼ばれ、膝関節が必要以上に伸びてしまうことで、歩行の不安定さや転倒リスク、膝や腰への負担につながります。
反張膝は、見た目だけの問題ではありません。膝をロックして歩くクセが続くと、膝の前後の組織にストレスがかかりやすく、痛みが出たり、歩く距離が短くなったりすることもあります。
一方で、反張膝は「仕組み」を理解し、原因に合わせてリハビリを組み立てれば、改善が期待できる症状です。
この記事では、患者さん・ご家族にも分かりやすい言葉で、具体的な方法まで整理してお伝えします。
反張膝の原因と症状
反張膝は「膝そのもの」だけが原因で起こるわけではありません。脳梗塞による麻痺や感覚障害の影響で、下肢全体の使い方や重心の運び方が変わり、その結果として膝が伸びすぎることが多いのが特徴です。
まずは原因を整理することで、「なぜ反るのか」「どこを狙って練習すべきか」が見えやすくなります。
筋緊張の異常(ふくらはぎ・太もも前のバランス)
脳梗塞後は、筋肉が過剰に緊張したり(痙縮)、逆にうまく力が入らなかったりします。反張膝では、ふくらはぎが硬くなりやすい一方で、太もも前(大腿四頭筋)や股関節周りの「支える力・コントロール」が不足し、膝を伸ばしきって安定させようとする動きが起こりやすくなります。
また、足首の背屈(つま先を上げる動き)が出にくい場合、身体は「つまずかないように」「倒れないように」無意識に膝をロックしがちです。
このように、反張膝は膝単独ではなく、足首〜股関節までの連鎖の中で出現することが多い点が重要です。
体幹機能の低下(重心が安定しない)
体幹が不安定になると、身体を支えるために膝をロックする戦略が強くなり、反張膝が目立ちやすくなります。
例えば、歩くときに上体が前後左右に大きく揺れる方は、下肢が「急いで支える」必要が生じ、膝が伸びきる方向に働きやすくなります。
つまり反張膝は、膝の問題というよりも姿勢と重心移動の問題として現れるケースが多いのです。
感覚障害(膝の角度が分かりにくい)
膝の位置や曲がり具合を感じ取る感覚(固有感覚)が低下すると、「今どのくらい伸びているか」が分かりにくくなります。
その結果、膝を適切な角度で止められず、反張膝を繰り返してしまうことがあります。
また痛みを感じにくい場合、伸びすぎによる負担に気づきにくく、症状が固定化しやすい点にも注意が必要です。
反張膝のリハビリ方法(効果的な進め方)
反張膝のリハビリで大切なのは、「膝を無理に曲げる」ことよりも、膝が伸びすぎない位置(止める位置)を学習することです。
反張膝は歩行や立位で出やすいので、練習は「安全に再現できる環境」から始め、少しずつ生活場面に近づけます。
固有受容覚(位置感覚)を育てる運動学習
反張膝の方は「膝を少し曲げた状態」を感じにくいことがあります。
鏡やスマホ動画などで確認しながら、膝が伸びきる手前で止める感覚を作ります。ポイントは反る前に止めることです。
- 軽く膝を曲げたまま立つ(10〜20秒×数回)
- 浅いスクワット(痛みが出ない範囲/膝が前に流れすぎない)
- 左右・前後の体重移動(膝が伸びきらない位置を維持)
体幹の安定性を高める(膝に頼らない姿勢づくり)
体幹が安定すると、膝をロックして支える必要が減ります。座位で骨盤を起こす練習、立位で上体がブレないように保つ練習は、反張膝の改善に直結します。
特に「歩き出し」「方向転換」「疲れてきたとき」に反張膝が強くなる方は、体幹のコントロールが鍵になります。
装具療法(安全性と学習の補助)
装具は「治す道具」ではなく、正しい動作を学ぶためのサポートです。
膝装具で過伸展を抑えたり、足関節装具で足部の位置を整えたりして、反張膝が出にくい条件を作ります。
装具を使うときほど、「装具があるから反らない」ではなく「反らない歩き方を身体に覚えさせる」という目的を意識することが重要です。
歩行練習(生活に直結させる)
反張膝は歩行中に目立つため、歩行練習は欠かせません。平行棒・手すり・杖などを使い、安全に練習を成立させます。
歩くときは、歩幅を少し小さめにし、重心を前に運びすぎないようにすると反張膝が出にくい場合があります。
また、疲労が溜まると反張膝が強まることが多いため、短時間を複数回に分けて反復するのがコツです。
リハビリ時の注意点(悪化・再発を防ぐ)
個別性を大切にする(原因が人によって違う)
反張膝の背景は、痙縮が強い方、筋力低下が中心の方、感覚障害が強い方など様々です。
「同じメニューを増やせば良くなる」とは限らないため、評価→仮説→練習→再評価の流れで微調整しながら進めることが改善への近道です。
長期的な視点を持つ(良くなっても戻りやすい)
反張膝は一度改善しても、疲れや体調、環境変化で戻ることがあります。
良くなった後も、週に数回は「止める感覚」を確認する練習を入れると再発予防に役立ちます。
痛み・疲労のサインを見逃さない
膝の前側が痛む、腫れぼったい、歩くとどんどん不安定になる…といったサインがある場合、練習の量や方法が合っていない可能性があります。
「頑張れば良くなる」ではなく、適切に休みながら継続できる形に整えることが結果的に近道になります。
生活改善と家族サポートのポイント
反張膝の改善はリハビリ室だけで完結しません。日常生活の中での「立つ・歩く・座る」の積み重ねが、結果を大きく左右します。
環境を整えるだけで反張膝が出にくくなる方もいるため、できるところから見直してみましょう。
住宅環境の整備(安全が最優先)
- 段差の解消、手すりの設置、滑り止め(転倒予防)
- 動線の確保(つまずきやすい物を片づける)
- 夜間の照明を確保(暗い場所でのふらつき対策)
家族の関わり(声かけと見守りが効く)
家族は「治す役」ではなく、続けやすい環境を作る役です。
「急がせない」「疲れたら休む」「うまくできた動きを一緒に確認する」など、安心感のある関わりが継続の力になります。
特に、歩行練習は不安が強いと力が入り、かえって反張膝が出やすくなることがあるため、落ち着いて行える環境づくりが大切です。
よくある質問(短縮版FAQ)
脳梗塞後に反張膝が起こる原因は何ですか?
筋緊張のアンバランス、体幹の不安定さ、膝の位置感覚(固有感覚)の低下などが重なって起こることが多いです。
反張膝はリハビリで改善しますか?
適切なリハビリを継続することで改善が期待できます。短期で一気に治すより、動作を段階的に作り直すイメージが大切です。
反張膝に効果的なリハビリ方法は何ですか?
膝の位置感覚を育てる練習(運動学習)、体幹安定化、装具の活用、歩行練習を組み合わせるのが効果的です。
反張膝には装具は必要ですか?
全員に必須ではありませんが、安全に練習を進める目的で有効な場合があります。装具だけに頼らず、運動学習と併用しましょう。
反張膝の再発を防ぐにはどうすればいいですか?
改善後も「反る前に止める」意識を続け、疲労時は無理をしないことが大切です。環境調整と継続的な運動が再発予防につながります。
まとめ
脳梗塞後の反張膝は、筋緊張の異常、体幹機能の低下、感覚障害などが複合的に関与して起こります。
放置すると膝や腰への負担、転倒リスク、歩行距離の低下につながることがありますが、原因に合わせたリハビリ(固有受容覚の運動学習、体幹の安定化、装具、歩行練習)を段階的に行うことで改善が期待できます。
「どの練習が合うか」は人によって異なります。怖さや痛みがある場合は無理をせず、専門家と相談しながら、自分に合ったペースで継続できる形に整えていきましょう。








