ブルンストロームステージ(Brs)とは?評価方法とその注意点

脳出血や脳梗塞など脳卒中後のリハビリにおいて、患者の運動機能の回復を適切に評価することは非常に重要です。その際に広く用いられる指標の一つが「ブルンストロームリカバリーステージ(Brunnstrom Recovery Stage, Brs)」です。Brsは、上肢・手指・下肢の運動機能の回復過程を6つのステージに分類し、それぞれの段階に応じた評価とリハビリの指針を示します。
本記事では、Brsの評価内容とその具体的な方法、各ステージでの注意点について詳しく解説します。患者の回復状況を正しく把握し、より効果的なリハビリ計画を立てるための参考にしてください。

目次

Brsの評価内容

Brsによる上肢の評価方法

Brsによる手指の評価方法

Brsによる下肢の評価方法

まとめ

Brsの評価内容

Brsは、脳卒中後の運動機能の回復を段階的に評価するための指標です。上肢・手指・下肢の3つの部位ごとに、それぞれ6つのステージに分類され、随意運動の出現状況や協調性の向上度を確認します。各ステージでは、随意運動の可否や共同運動の程度が重要な評価ポイントとなり、リハビリの進行度を判断するための基準となります。Brsの評価は、患者の現状を正しく把握し、適切なリハビリ計画を立てるための重要なステップです。

Ⅰ:随意運動がみられない
Ⅱ:共同運動が一部出現、連合反応が誘発される
Ⅲ:十分な共同運動が出現
Ⅳ:分離運動が一部出現
Ⅴ:分離運動が全般的に出現
Ⅵ:分離運動が自由にできる、やや巧緻性に欠ける

とされています。また、回復段階の判定については、一つ以上の課題が可能な最も高いステージとなります。これを踏まえて上肢・手指・下肢それぞれの評価方法を詳しく見ていきましょう。

Brsによる上肢の評価方法

上肢の運動機能の回復を評価する際には、Brsのステージごとに異なる基準を用います。特にステージⅠとⅡでは特定の評価肢位の指定はありませんが、ステージⅢ以降では座位での評価が求められます。上肢の回復段階を適切に評価することで、日常生活動作(ADL)への応用やリハビリの方向性を明確にすることができます。
上肢の運動回復には個人差があり、各ステージでの評価がリハビリの進捗を測る重要な指標となります。ここでは、各ステージの詳細な評価基準について解説します。

Ⅰ:弛緩麻痺
Ⅱ:①わずかな屈曲共同運動
  ②わずかな伸展共同運動
Ⅲ:①明らかな関節運動を伴う屈曲共同運動
  ②明らかな関節運動を伴う伸展共同運動
Ⅳ:①腰の後ろに手を持っていく
  ②肘関節伸展位で肩関節90°の運動ができる
  ③肘関節90°屈曲位で回内外の運動ができる
Ⅴ:①肘関節伸展回内位で方外転90°の運動ができる
  ②肘関節伸展位で頭上まで前方挙上ができる
  ③肩関節90°屈曲位及び肘関節伸展位での回内外ができる
Ⅵ:ステージⅤまでの課題すべて可能で非麻痺側と同程度にスムーズに動かせる

Brsによる手指の評価方法

手指の機能回復は、日常生活の自立度に大きく影響を与えるため、細かい動作の評価が重要になります。Brsの手指評価は、姿勢の指定がないため、患者が最もリラックスできる肢位で評価を行うことが可能です。
指の運動機能の回復には、握る・つまむ・開くといった基本動作の再獲得が重要です。各ステージの評価基準を正しく理解し、適切なリハビリ方法を選択することが求められます。

Ⅰ:弛緩麻痺
Ⅱ:全指屈曲がわずかに出現
Ⅲ:全指屈曲で握ることが可能だが、離すことができない
Ⅳ:①不十分な全指伸展
  ②横つまみが可能で母指の動きで離せる
Ⅴ:①対向つまみ
  ②随意的指伸展に続く円柱または球握り
  ③全可動域の全指伸展
Ⅵ:ステージⅤまでの課題すべてと個別の手指運動が可能

Brsによる下肢の評価方法

下肢の評価では、ステージごとに異なる評価肢位(臥位・座位・立位)が指定されています。下肢の回復が進むことで、歩行や姿勢保持能力の向上が期待できるため、各ステージの特徴を正確に把握することが重要です。
歩行能力の回復には、膝や足関節の安定性が大きく関与するため、各ステージに応じた適切な訓練が求められます。ここでは、下肢のBrs評価方法について詳しく説明します。

Ⅰ:弛緩麻痺
Ⅱ:①わずかな屈曲共同運動(臥位)
  ②わずかな伸展共同運動(臥位)
  ③非麻痺側股関節内転抵抗運動によるレイミステ現象(臥位)
Ⅲ:①明らかな関節運動を伴う屈曲共同運動(座位)
Ⅳ:①膝関節を90°以上屈曲して足を床の後方にすべらす(坐位)
  ②踵を接地した状態で足関節背屈ができる(座位)
Ⅴ:①股関節伸展位で膝関節屈曲ができる(立位)
  ②踵を接地した状態で足関節背屈ができる(立位)
Ⅵ:①下腿内外旋が、足の内外がえしを伴って可能(座位)
  ②股関節外転ができる(立位)

まとめ

Brs(Brunnstrom Recovery Stage)は、脳出血や脳梗塞など脳卒中後の運動機能の回復を評価するための重要な指標です。上肢・手指・下肢それぞれにおいて、ステージⅠ(随意運動なし)からステージⅥ(自由な運動可能)までの回復段階が設定されており、リハビリの進行度を客観的に判断することができます。また、こちらでは下肢のBrs回復段階と歩行能力の関連性を示した表がございますので参考にしてみてはいかがでしょうか。

リハビリの成功には、患者の現在の運動機能を正しく評価し、適切な訓練方法を選択することが不可欠です。本記事の内容を参考に、それぞれのステージに応じたアプローチを取り入れ、効果的なリハビリを進めていきましょう。

【Brs(Brunnstrom Recovery Stage)の評価シート】

【参考文献】
編 細田多穂・柳澤健(2010)『理学療法ハンドブック-第1巻 理学療法の基礎と評価』協同医書出版社.
望月久 . 脳卒中における機能障害と評価 .理学療法科学. 2007 ,vol 22, no1 , p.33-38 .

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脳梗塞リハビリSSP高松
理学療法士 井上