脳梗塞後の装具療法とリハビリテーション
こんにちは。脳梗塞リハビリSPP高松の井上です。
突然ですがSSP高松に通われている方で装具を装着されている方がどれくらいいるのかを改めて確認しました。結果は二人に一人以上は何かしらの装具を装着していることが分かりました。それだけ装具を装着されている方が多くみられていますが、足首の固定性を高めるためや足関節の内反を抑えるためなど症状は様々です。今回は脳梗塞についての概要を少しお話した後装具の重要性や大まかな種類をご紹介したいと思います。
目次
脳梗塞とは
脳梗塞の初期症状
脳梗塞の種類
脳梗塞の原因
脳梗塞後の後遺症
脳梗塞後の装具療法
1.装具とは
2.装具療法の推奨
下肢装具の種類
1.長下肢装具(knee ankle foot orthosis:KAFO)
2.短下肢装具(Ankle foot orthosis:AFO)
装具療法とリハビリテーション
脳梗塞とは
脳梗塞とは脳卒中の一つで、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血を総称して脳卒中と言います。その中の脳梗塞とは、何かしらの原因で脳の血管が閉塞や狭窄により詰まる事です。血管が詰まることで、脳に十分な栄養が届かなくなり、脳細胞の一部が機能障害を起こしたり最悪壊死することもあります。
脳梗塞の初期症状
脳梗塞は急に起こります。こういった症状が現れた際は要注意です。
1.身体半身の力が入りにくくなる。
2.突然の激しい頭痛
3.呂律が回らなくなる
4.歩行時のふらつき
などがあげられます。また、一時的に症状が現れすぐに消失しても安心せずに一度病院に相談してみましょう。
脳梗塞の種類
脳梗塞には大きく分けて3種類あります。
- アテローム血栓性脳梗塞
- ラクナ梗塞
- 心原性脳塞栓症
の3種類になります。
脳梗塞の原因
脳梗塞の原因にはいくつかあります。厚生労働省からは危険因子として、高血圧、不整脈(心房細動)、糖尿病、喫煙、肥満などが発表されております。特に高血圧に関しては脳卒中治療ガイドラインにおいても「脳卒中発症予防のため高血圧患者では降圧治療を行うよう勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)」とされているため十分に注意しましょう。
脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)
脳梗塞後の後遺症
脳梗塞後は後遺症に悩まされる方が8割以上いると言われています。後遺症の一つである運動障害により手足が思うように動かなくなることで、生活が困難になります。そのため、生活動作で必要な歩行能力が低下し、移動範囲が狭まったり、移動手段が車椅子になったりします。手足が上手く動かない場合の手段として装具を使用する方も多くみられます。今回は装具を一部ご紹介させていただきます。
脳梗塞後の装具療法
1.装具とは
『病気やケガなどにより手や足、腰や首など体の部位に、痛み、損傷、麻痺などが生じたときに、治療や症状の軽減を目的として装着する器具です。手や腕に装着するする装具を上肢装具、脚に装着する装具を下肢装具、腰、胸、首に装着する装具を体幹装具と呼びます。また、治療、リハビリ、日常生活の補助などの目的で使用するものや、予防や矯正を目的とするものもあります。』
とされており、脳梗塞後の片麻痺によっても上肢装具や下肢装具は使用される場合があります。
公益社団法人日本義肢装具士協会HP引用
2.装具療法の推奨
脳卒中治療ガイドラインでは脳卒中後の歩行障害に対する装具療法についての内容があります。
『脳卒中後片麻痺で膝伸展筋筋力もしくは股関節周囲筋筋力が十分でない患者に対して、歩行機能を訓練するために長下肢装具を使用することは妥当である(推奨度B、エビデンスレベル低)』
『脳卒中後片麻痺で内反尖足がある患者に対して、歩行機能を改善させるために短下肢装具を使用することが勧められる(推奨度A、エビデンスレベル高)』
また、痙縮に対しても『装具療法を行うことは妥当である(推奨度B、エビデンスレベル中)』とされており、歩行障害や痙縮に対する装具療法は推奨度が高くなっています。
下肢装具の種類
脳梗塞などの脳卒中発症後で使用される下肢装具はいくつか種類があります。
1.長下肢装具(knee ankle foot orthosis:KAFO)
長下肢装具は主に膝関節、足関節の固定が行えます。重度の機能障害により立位保持や歩行動作が困難な方でも長下肢装具を使用して立てったり歩いたりすることができます。基本的には脳卒中発症後早期で使用する場合が多く、重度な方でも早期から麻痺側に体重がかけられるのが大きなメリットになります。しかし、多くの場合、長下肢装具から後にご紹介する短下肢装具に切り替えます。長下肢装具を購入しても使用しなくなる可能性があり、結果的に出費が嵩張ることがありますので購入時は十分に検討する必要があります。また、病院によっては長下肢装具を置いているところもあるためその場合は購入しなくても長下肢装具を使用できる場合があります。
2.短下肢装具(Ankle foot orthosis:AFO)
短下肢装具は主に足首の固定や制動などが行えます。膝関節の筋力が十分な方は発症早期でも長下肢装具を使用せず短下肢装具から使用する場合もあります。足関節の動きを出したい場合は足継手付きの短下肢装具を使用することで足首の動きを出し、より正常の動きに近づけた動作を獲得することができます。短下肢装具は退院後の生活期でも使用している方が多くみられます。しかし、身体状態の変化や使用年数によって変更しないといけない場合があります。最近歩きづらや、年数が経ってきた場合はかかりつけのお医者さんに一度相談してみましょう。
装具療法とリハビリテーション
下肢装具では身体状況などに応じてタイプを選定して行く必要があります。脳卒中治療ガイドラインでも推奨されていることから筋力が不十分な場合は使用を検討しリハビリテーションの効果を高めるのも一つの選択肢となります。入院中であれば主治医の先生や担当療法士などに相談してみてもいいと思います。退院後の生活期では装具に関する相談窓口が少ないのが現状となっております。最近、歩きづらくなった場合、原因が装具にある可能性があります。また、今の装具が合っているかわからないなどお悩みの方はSSP高松でも相談をお受けしております。
住所:香川県高松市桜町2丁目15-46 チェリータウン101
電話:087-802-1290
脳梗塞リハビリSSP高松
理学療法士 井上
【参考文献】
①日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会:脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕.協和企画,東京,2023,pp1-291
②渡邉英夫.(2019).「脳血管障害による片麻痺への下肢装具による実用的アプローチ」.Jpn J Rehabil Med 2019;56:260-266